news

【MBS Story】MBSでの出会いが新会社設立へ

2023.07.14

MBS受講感想及び新事業に関するインタビュー

めぶくビジネススクール受講での出会いがきっかけとなり、それぞれの会社の特性を活かしたサスティナブルな新会社を設立するに至りました。MBS受講の感想とともに、新会社設立の経緯や目指していることなどをお伺いしました。

【日時】2023年6月9日(金)16:30~17:15

【インタビュイー】
カネコ種苗株式会社

 システム開発部営業グループ 課長

 西澤光義さん(MBS受講者:写真右)

GNホールディングス株式会社

 GNグループ支援本部本部長兼財務部部長

 山田健介さん(MBS受講者:写真左)

 GNグループ経営戦略室マーケティング戦略部兼アウディ営業部マーケティングマネージャー

 渡邉将さん(㈱mino-lio推進担当)

受講内容についての感想をお聞かせください―

山田健介(以下、山田):まず今回の受講スタイルが非常に良いと思いました。講義だけでなくグループディスカッションや事前ワーク等があって個人で考えたものを、グループでぶつけ合う。その中で多種多様な業種の方が集まっているので、ずっと同じ業種に携わってきて見方が偏ってきてしまった視野が広げられたことが受講して良かったなと思っています。あとは第1クールから第4クール迄分かれていたが、ずっと同じ内容が続いてしまうと、どうしても中だるみしてしまうが、色々な角度から勉強させてもらったので継続的に勉強できました。

西澤光義(以下、西澤):自分の会社の中にいると、そこだけの考え方になってしまうので、コロナ禍でありながらも、色々な人に出会えたことによって新しい発想や新しい仕事・ビジネスにつながり、非常に貴重な体験だったと思いました。講師も丁寧に教えていただいて、生き残っていくためのリーダーシップの取り方など、会社の中で実践しているところです。会社の中では、何とかそこの気持ちを引っ張るというか、今回みたいな出会いがあって、こういったビジネスチャンスがあって実行したことによって後輩たちが後につないでいただきたい、自分はその先駆者でありたいなと、今回そう思いました。

――社内では、具体的にどんなふうに役立ちましたか?―

山田:今回のこれがまさにそういうことかと思いますが、第1クールで、無駄を削る講義があり、当社社長も言っているが、人間はどうしても変化を恐れる・変化を嫌う生き物であるので同じことを続けていくのが一番安定しているし、精神状態も安定することもありますが、それだけだとどうしても衰退してしまうことがあると思います。今回のように西澤さんからのご提案により巡ってきたチャンスをどうやって掴むか、そのためには変化をしなければならないので一歩踏み出すといったところが非常に参考になり、私たちのビジョンともマッチした結果、今回のような共同事業になったと思います。私たちの会社が今「Going Limitless」に向かって進んでいるので、今回こういうセミナーとかを受けさせてもらって色々なところから湧き出てくる、非常に良い企業になっていくなというところで仕事に役立っていると思いました。

西澤:やはり会社が送り出すというのは中核的な人材が成長してほしいという思いで送り出された人材だったので、会社の中でも中核的なポジションの方に出会えたことによって、自分たちの思いにも共感してもらって共有し、協業でこう言った問題点を解決できる場だったのかなと思いました。

――講義内容以外の点で役立ったことはありますか?―

西澤:(受講者同士の)出会いです。正直言ってここまで仕事で、会社の中でも一つの核になる仕事を任されたという、非常に嬉しい仕事になっています。

渡邉将(以下、渡邉):もし手元に名刺がなかったら、(ここにいる)3人は同じ会社に見えませんか?

3人に共通する空気を感じます―

渡邉:こういう関係の発端になっためぶくビジネススクールだと思います。僕は参加していないが、傍から見ていて奇跡的だなと思います。ここまでの関係性になっちゃうというのが。それくらい一緒にいます。

山田:西澤さんは種苗屋さんなので農薬や野菜の話をされるかと思ったら一つもせず、エネルギーの話ばかりが出てくるんです。こういうご縁を与えてくれたのがMBSで、プレスクールから一緒に参加しています。

西澤:はじめにグループワークで一緒になり、その時からのお付き合いです。本当に偶然の出会いでした。

山田:たまたま隣の席になったということがきっかけです。はじめは、私がタラの芽を育てていて、詳しいのかと思って水耕栽培について相談したら、カネコ種苗で水耕栽培用プラントを手掛けていてイチゴやトマトの栽培もその水耕栽培をしているという話になり、その中で「GNホールディングスは客から回収したエンジンオイルをどのように処理しているか」という質問がきっかけになりました。

西澤:農家はエネルギーに悩んでいて、GNホールディングスは廃オイルをどうしているかという素朴な疑問から今回の事業が始まりました。

山田:交換した古いエンジンオイルは廃エンジンオイルとして「ゴミ」だと思っていました。新しい綺麗なオイルを交換して快適に運転してもらうことが私たちの使命だと思っていたので、廃エンジンオイルは廃油回収業者に引き取ってもらっていて、それに価値があるとは一つも思っていませんでした。しかし西澤さんの話によると、農業界からみたらお宝の山であったと知りました。
 ちょうど私たちGNグループは3年後に100周年を迎えます。企業としての新しいブランド価値を見出そうという話になっていて、新しい企業のビジョンとして「Going Limitless」を掲げて取り組んでいるところです。車の能力は非常に高いが能力を使いすぎると速度が出過ぎるなどの危険性があるためリミッターという制御装置がついています。その能力を最大限に発揮するためにはリミッターを解除することが必要で、当社ではそのリミッターを超えて取り組んでいこうというものです。そのためには①時代・人に向き合う②勇気をもって試す③スピード感をもって取り組む、といった3つのバリュー(ステートメント)がありますが、そういった中で西澤さんの話が舞い込んできて、ご縁を感じました。西澤さんは、当社が進んでいこうとした道である Going Limitless をまさに体現している方だと思っています。

西澤:私が種苗会社に勤めている以上、仕事のタネを蒔いてどんなものができるかということも種苗会社の仕事かなと思っています。皆さんに「西澤君は種を売ってないじゃないか、何の会社なの?」と言われますが、僕は種苗会社です、仕事の種まきをしてますよ、どんな形ででも、と答えています。当社では600人社員がいる中で、私は1/600と言われています。私のような社員が5人もいたら困るけど、一人くらいなら雇っても良いよ、ということかと思っています。

山田:しかしその1/600の活動をしている人が、将来GNグループが目指す方向性と合致したという感じです。奇跡的な出会い、一期一会とはこのことだと思います。

西澤:(今回の協業する農業法人の作物が)イチゴだけにね(笑)。

山田:お客様からオイル交換で預かった廃オイルを今までは回収業者に引き取ってもらっていました。回収業者は再生して全く違うところに流通させていたが、これを当社に戻してもらってビニールハウスを温めるバーナーの燃料として使い、できた生産物が客先に届き、その客がまた当社に来てくれるというサイクルができたら良いという、西澤さんの提案が形になったものが今回の株式会社mino-lioです。

西澤:廃オイルってどうなってるのかなと疑問に思っていたが、これは捨てられる物であることを知りました。農業は1次2次3次、生産加工流通を足してもかけても6になる6次産業でなるが、企業を発展させる中でリサイクルから目を背けてはいけないので、SDGsという観点で提案させてもらいました。山田さんに調べてもらったところ、年間43万リットルの廃オイルが排出されているとのことでした。

山田:グループ会社には群馬日産自動車や、一昨年の4月に仲間に加わった日産プリンス群馬、GNホールディングス、GNロジパートナーズがあり、グループ全体で年間43万リットルのオイル交換を少なくとも過去3年間はしていたということが調べて分かりました。

西澤:それは油田であると感じ、「油田を探しに来ました」と伝えたのです。

山田:そこから始まりました。

渡邉:懐かしいと思ったが、そんなに前の話ではないですね。

西澤:提案に行ったのは昨年の6月9日でした。

――1年でここまでの形になっているのですね――

西澤:そうです。早かったと思います。

山田:死ぬ思いでした。生みの苦しみもこれから待っていると思うが、本当にあっという間に物事が進んできました。しかし、ここまでに多くの壁にぶつかってきました。

――一番大きな壁はどういったものでしたか――

西澤:やはり、農地所有適格法人になることです。企業が農家になることは結構大変でした。今回は農地を取得するということで高崎市にアドバイスをいただきながら書類を作成していきました。

山田:収支についてはいまだに悩んでいるが、イチゴで儲けようとはあまり思っていません。もっと取り組んでいきたいのは、40万リットルのオイルをどうやって地域の農家へ上手く供給し、地域貢献できるかということを今後は進めていきたいと思っています。農家とつながり、廃オイルと有効活用してもらうことで、上がってしまった燃料費に少しでも貢献できると良いと思っています。そのためにまず株式会社mino-lioの事業でリサイクル重油を使い安定的な生産ができるというところを見せていきたいのです。スタートラインに立ったというところです。

▲イチゴ栽培予定地(ドローン撮影)

――何年くらいの計画ですか――

山田:3年くらいで収支ベースを合わせて5年くらいでリサイクル重油の供給ができるような組合を作っていきたいと思っています。

西澤:ちなみに、廃オイルを燃やすと炭酸ガスが出るが、本事業では排出量0となります。

――どのような仕組みで排出量0となるのですか?――

渡邉:これには法律が絡んでいます。省エネ法では、重油・ガソリン等は化石燃料であるが、リサイクルでできた再生重油は法律上非化石燃料とされています。温対法という法律上、自社の出したCO₂は排出量を図り算定して報告する必要がありますが、再生重油を燃やしてCO₂が出てもカウントせず報告しなくても良いこととされています。農家は重油を燃やす、私たちは廃オイルを処分するために焼却する、そうなると両方CO₂が出ますが、廃オイルの焼却処分をせずリサイクルして農家で重油として燃やすならば、焼却処分する際のCO₂排出はなくなるということで、実質0としてカウントするものです。広い視野で考えないと実質0にはなりません。

――結局燃やしてCO₂が出る、という考え方ではないのですね――

渡邉:そのように考えてしまうとリサイクル事業が進まないのです。実際に、(廃オイルを)焼却処理をしていない分、半減していると考えます。

西澤:こういう考え方はほとんど知られていないのです。当社でプレゼンした時も皆理解できませんでした。

山田:群馬県の5つの0宣言の中に、温室効果ガス排出量0があり、この内容を見ると、排出「実質」0にするとあります。どうしても燃やさなければならないものがあるためCO₂は出てしまうが、非化石燃料をエネルギーにすることなどで実質0を目指していくということが第一歩目になるのです。将来的には本当に0を目指すものではありますが。

西澤:今回は(CO₂削減の取組を)産業界から農業界に持ってきたというところが新しい取り組みです。実質炭酸ガスゼロイチゴというブランドが付いてくると思っています。

――イチゴの販売はどのようにするのですか?――

渡邉:色々考えているが、まずは当社のお客様に何らかの格好で楽しんでいただきたいと思います。また、社員も多くいるので社員やその家族に販売したりイチゴ狩りに来てもらったり、関連企業にも案内していきたいと考えています。新しいチャレンジとして、クラウドファンディングなども良いと思っています。まずはそういうところから優先的に実施し、もちろん直売所も考えています。

――仕組みを拝見した際、イチゴがCO₂を吸収するから実質0としているのかと思ってしまいました――

山田:植物を育てるためにはCO₂が必要で、ビニールハウスのように閉鎖された空間でエネルギーをかけて植物を成長させるとどんどんCO₂が無くなってしまいます。実はビニールハウスはCO₂を供給しないと植物が育たなくなってしまうので、灯油を燃やしてCO₂をビニールハウスに供給するための装置が存在しています。これは化石燃料を燃やしてCO₂を発生させるものですが、これも西澤さんが積極的に取り組んでいます。ペットボトルのキャップなどの廃プラスチックにエネルギーをかけるとそこからまた油が採れて、それも廃棄物由来の油として非化石燃料になります。これを使ってハウス内にCO₂を送り込むといったことも、もう少し長いスパンにはなるが将来的には進めていきたいという考えを、西澤さんは持っているそうです。

西澤:日本の資源が少ない中で私たちが捨てている資源を有効活用できるのだということを群馬・前橋から発信できるかたちにならないかなと考えています。ゴミ箱を見てみたら「これは資源になるな」と思ってもらえるように。

――ペットボトルキャップをどのようにリサイクルしているか、考えたことがありませんでした――

西澤:それを見える化したいのです。ペットボトルのキャップは1kg10円で引き取る業者がいて、業者が電気で油化すると油にまた生まれ変わり、それを蒸留してナフサ・軽油・灯油・重油という形で私たちが使える油にコントロールするものです。それを今度農業のところで使うと、灯油もゴミ由来の灯油であり、サスティナブルな取り組みができるということです。ペットボトルのキャップを集めると、実はmino-Lioのところのイチゴに生まれ変わるんだよと、(リサイクルの)見える化ができると思っています。

――個人的なリサイクルの意識も高まるし、SDGsにももちろん直結するということですね。サスティナブルな取り組みをしているという評価が会社の評価にもつながっているということでしょうか――

西澤:そうです。値段だけではなく、そういった会社の取組とかをフォーカスする時代にこれからなっていくのではないかと思います。

――ちなみに、オイルとしての性能としてはリサイクル油脂も同じなのですか――

西澤:そこも、廃オイルを回収している人の、産業界の技術を以ってして、というところです。初めは、自分たちでろ過沈殿して油を抽出しようかと思ったが、最終的に農家に(再生重油を)普及するには従来のインフラを使ってやらないといけないと思い、回収している群桐産業さんに協力を得ました。

山田:群桐産業さんには、私たちが昔から廃油を引き取ってもらっていました。それを群桐産業さんに濾過してもらって戻してもらうという仕組みです。

渡邉:なにしろ危険物なので。危険物が43万リットルもあると素人では扱えませんし、運べません。そこはプロの力をお借りしたいと思います。

山田:廃油を専門にしていらっしゃる企業なので、廃油リサイクル事業の品質チェック等もしており、安定したリサイクル重油を供給してもらっていますので、(リサイクル重油を)使う人もその方が安心だと思います。

西澤:何故農家は再生重油を使わなかったかというと、やはり若干すすが出るので、農家は定期的に掃除をしなければならない手間があったからです。また、暖房機メーカーの再生重油を燃やすバーナーがほとんどなかったこともあります。たまたま北海道でやっている事例を紹介して、じゃあこれを本州にもってきてやりましょうというかたちで今取り組みをしています。

――再生重油を使う場合、農家は機械自体を変える必要がありますか?――

西澤:そっくりそのまま機械を変えるパターンと、今やってる暖房機の中の一部を交換できるパターンもあります。

山田:燃料代とすると、断然再生重油の方が安く、半額から6割くらいになります。始めはイニシャルコストがかかってしまうかもしれないが、ランニングコストで回収できるところもあるし、リースを取り入れてもらえれば初期投資を押さえるということもできると思います。

西澤:地域に貢献することが一番の目的です。車のディーラーは群馬にいっぱいいるので、それがライバルということではなく、SDGsとしてこういった取組は面白いねとなり(ディーラーの)みんなでやった場合は結構な油田になるのではないかと思っています。そうすると、群馬県の0宣言に自動車業界が貢献でき、また、バス会社・タクシー会社など(エンジンに関わる)他の車産業の人たちも非常にこれに興味を持ってくれるのではないかなと思っています。
やはり、これ(mino-Lio)を発信したときに、世の中が少し変わるのではないかと見ています。「実質炭酸ガスゼロって何?燃やしてて炭酸ガス出てるよね?」って、会話になるところから始まるのではないかと思っています。

渡邉:ほかにも、私たちはまえばしハニープロジェクトと手を組んで、まえばしハニープロジェクトから蜂を貸してもらっています。授粉用の蜂は飼い殺しにしちゃうというか、使い捨てにしてしまうのが一般的ですが、蜂の体力が少しなくなってきたら新しい巣箱と入れ替えて、蜂を殺さないようなサスティナブルな受粉の在り方を今模索しています。まえばしハニープロジェクトでは、通常であれば(蜜蜂を)貸さないという話だったが、私たちのコンセプトを聴いて賛同してくれました。初めてのことのようです。
 西澤さんがくれたパスからどんどん広がって、それでこそめぶくというか、花開いているところです。

山田:私たちは自動車を販売している会社なので、色々な取引先とご縁があり、金井イチゴ園という高崎のイチゴ園も、実はプリンス群馬でお付き合いしているお客様であったりとか、本当にそういう人のご縁でつながっているなというところを感じます。群桐産業さんも通常はリサイクル重油というのは小売りはしていないという話ですが、長く当社とお付き合いをさせてもらっていただいていたので、(新規事業の意図を)汲んでもらいました。

――日頃のお付き合いの結果がここにつながってきているのですね――

山田:本当に助けられています。今後はやはり広報していかないといけないので、InstagramとかTikTokとか活用予定ですが、そういうのを若いチームとかが手伝ってくれたりします。まだまだグループ内ですら充分(新規事業の話が)行き渡っていないので、それも6月13日のマスコミのリリースに関連してやっていきたいなと思っています。

渡邉:これから広めていきたいですね。

山田:どんどん広めていきたいです。

西澤:色々な問題を解決できるということはもう確認をしていて、私たちは本当にサスティナブルなパートナーだと感じています。(そうなるきっかけとして)そこにめぶくビジネススクールがあった、と思っています。

◄ 一覧に戻る